- 相続が発生すると、相続税の申告だけでなく、様々な手続きが必要です。
例えば、相続人の確定、土地等の相続財産の評価、遺産分割協議書の作成、預貯金、有価証券、不動産の名義変更等を行わなければなりません。 - 円滑な相続を行うため、以下の点に気をつけてください。
(1) 相続財産の評価
財産評価に占める割合が高いのは土地です。
上手に土地の評価を行うことが相続税を安くすることにつながります。
(2) 財産分割
財産分割のポイントは、どうやってスムーズに行なうかです。
まず、各相続人がどのような考えを持っているかよく話し合ってから、遺産分割の方向性を確認し、遺産分割協議を円滑に進めるための準備が必要です。この部分を性急にすすめるとトラブルにつながる可能性があります。
(3) 納税資金
相続税をどのように納めるか財源の確保が必要となります。現金での納付が困難な場合は、現金での納付と物納を組み合わせることも検討が必要です。
Q2. 葬儀費用の支出で、どんなところに気をつければよいですか?
A2. 以下の点に気をつけてください。
葬儀社への支払以外の出費で、領収書がいただけないケースがあります。
たとえば、寺院、神社、教会などに支払ったお布施、戒名料、読経料などは、領収書が発行されない場合がほとんどです。また、参列者へのお車代、葬儀をお手伝いいただいた方への心付けなども領収書がいただけません。
このような場合は、忘れないうちにメモしておきましょう。
Q3. 遺産の評価額を確認しましたが、相続税はかからないと思われます。申告は不要でしょうか?
A3. 相続税がかかる財産を確認されて基礎控除額の範囲内であれば、申告の必要はないものと思われます。
ただし、相続税の特例を受ける場合は、相続税の申告期限内に申告を行うことが適用の条件になるため申告が必要です。
次のような特例の適用を受ける場合は、相続税の申告を行ってください。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者の税額軽減
- 農地等にかかる相続税の納税猶予
Q4. 被相続人の名義になっていない財産があります。どの様に取り扱えばよいでしょうか?
A4. 相続税は被相続人の財産を基礎として計算されるもので、財産の名義の如何にかかわらず実質で判断されます。
名義が被相続人のものではなくても、実質的に被相続人の財産と判断されるものは、必ず申告しなければなりません。
たとえば、被相続人が毎年相当額の定期預金を配偶者や子供の名義で行っているケースがあります。
このような場合、名義は相続人ですが実質は被相続人の財産と見做されます。
実質的な所有者は、以下の点を斟酌し判断します。
- 預金の出し入れ等の管理は誰がやっていたか?
- 相続人(名義人)はその預金の存在を知っていたか?
- 銀行印は相続人のものか?
- 通帳の保管場所はどこか?
- 贈与税の申告はしたか?
- 通帳作成時の申込書は、相続人自身がサインしたか?
仮に被相続人の財産を相続税の申告計算から除外したとしても、後日の税務調査において、その存在が明らかになれば、追加納税はもとより、延滞税、過少申告加算税又は重加算税といった税金が課せられます。
税務署の情報収集は緻密で、相続人名義の預金通帳は、その有無を含め必ず銀行に照会されます。被相続人の家族名義の財産は必ず調査対象になるといっても過言ではありません。
Q5. 離れて暮らしていた親が亡くなりました。遺産はどうやって調べればよいでしょうか?
A5. ご相談のケースでは、こうやって調べればよいという方法はありません。
以下を手がかりに財産を把握して行きましょう。
- 預貯金通帳
定期収入や定期支出の確認 - 領収書、請求書
定期収入や定期支出の確認 - 郵便物や名刺
取引のある銀行、証券会社、生命保険会社の確認 - 固定資産税納税通知書
所有している土地、建物の確認 - 所得税申告書
収入状況や保険への加入状況の確認 - 宝石・骨董品などの現物や鑑定書
なお、生前に親しくしていた方がいたかどうかを調べ、生前の様子を聞いたり不明点を相談してみましょう。
Q6. 被相続人が亡くなってから遺産分割協議が決まるまで間に発生する収入はだれに帰属しますか?
A6. 税法上は、相続開始の日から遺産分割協議が終わるまでの収入は法定相続分で処理するようになっています。
アパートやマンションの家賃収入等がある場合、遺産分割協議が終わるまで間、法定相続分に従い相続人に帰属することになります。
相続が発生した場合、申告期限まで10か月あるので遺産分割は、すぐには決まりません。
そのため、遺産分割が決まるまでの間に所得税の確定申告期限を迎えるケースも考えられます。
このような場合は、法定相続分に従って家賃収入等を案分し処理する必要があります。なお、アパートやマンションに係る借入金利息の支払や固定資産税の支払が生じた場合も法定相続分により按分し処理する必要があります。
Q7. どのような税理士に相談したらよいでしょうか?
A7. 以下のような視点で判断することをお勧めします。
- 相続税の経験の多い税理士
相続を専門に扱っている税理士に依頼すると、土地の評価を安くするのがうまく、相続税を抑えることができます。
土地の「相続税評価額」を正しく計算するには「建築基準法」「都市計画法」「借地借家法」「土地開発指導要綱」等の不動産関連法を理解している必要があります。
ただし、税理士が不動産関連法に詳しいことを事前に確認することは困難です。
このような場合は、相続税の経験の多さやその税理士が外部の専門家とどのようなネットワークを持っているかを確認することをお勧めします。 - 事前に見積書を作成してくれる税理士
相続税の申告の報酬の相場は、相続財産の0.5~1%程度と言われています。
しかし、相続の内容により手間や難易度が異なり、相続はやってみなければわからないのも現実です。
無料相談の際に、相続財産や相続人の数等、相続の概要をお伝えし、その内容を基に見積もりを作成してくれる税理士に相談することをお勧めします。 - 相談しやすい税理士
こちらからの相談内容をよく聞いてくれる税理士がよいでしょう。反対に質問しにくい税理士は避けるべきでしょう。
なお、親戚筋の税理士メリット・デメリットがあります。税理士と相続人が親戚関係だと相談しにくいことや第三者に知られたくないこともあるので回避するほうが無難です。
Q8. 顧問税理士がいます。相続税の部分だけをお願いすることは可能でしょうか?
A8. 法人税や所得税は、そのまま現在の税理士にお任せして、相続税の申告のみを当事務所にご依頼いただくことも可能です。
また、顧問税理士の方からお客様をご紹介いただき、顧問税理士と一緒に相続税の業務のみお手伝いさせていただくことも可能です。
Q9. どの様な場合に土地の評価減が適用できるのでしょうか?
A9. 土地を評価する場合、以下のような土地が評価減の対象になります。
- セットバックを必要とする宅地
- 間口が狭小な宅地
- 奥行が長大な宅地
- 不整形な宅地
- 都市計画道路予定地の区域内にある宅地
- 利用価値が著しく低下している宅地
- 地積規模の大きな宅地
それぞれの詳細は、当事務所の該当ページをご参照ください。
Q10. 遺産分割協議はどのように進めたらよいでしょうか?
A10. 長男(長女)など、遺産分割協議で中心的な役割を果たす相続人は、他の相続人に遺産分割協議の進め方に関する意見を聞くことから始めましょう。
最初に分割案を提示するようなことはせず、誠実な態度で先祖代々の土地や財産を守らせてほしいとお願いする姿勢が大切です。
遺産分割協議の進め方の一例は以下のとおりです。
- 遺産分割協議で中心的役割を果たす相続人は、葬儀が一段落し、お世話になった方々へのお礼がすんだら、すべての相続人にお会いしましょう。全員といっしょに会ってもいいですが、遺産分割について、強い希望がある方がいらっしゃる場合は、別々にお会いすることをお勧めします。
- 各相続人にお会いし、遺産分割協議の進め方について意見をお聞きしましょう。
- この段階で税理士にも相談し、遺産分割の進め方についてアドバイスを受けましょう。
- すべての相続人に集まってもらい、税理士の作成した遺産分割協議に関する原案を提出しましょう。
穏やかな話し合いができそうな場合は、その場で各相続人の意見をお聞きしましょう。もし話し合いが進まないようなら税理士に各相続人の希望をヒアリングしてもらいましょう。
Q11. 生命保険金や死亡退職金は遺産分割協議の対象にならないとききましたが本当ですか?
A11. 生命保険金は、原則として契約時の受取人が受取ることになるので、遺産分割協議の対象にはなりません。
同様に死亡退職金も遺産分割協議の対象になりません。
たとえば、父(被相続人)の遺産総額が6億円(生命保険金1億円、その他財産5億円)のケースで、生命保険の受取人を長男にしていた場合、遺産分割協議の対象となるのは5億円で、1億円は長男が受け取ります。
Q12. 配偶者と子供が相続する財産で留意点はありますか?
A12. 将来的な視点で、配偶者が亡くなったときの相続税申告(2次相続)を考慮する必要があります。
今回の相続(1次相続)で相続税を最も軽減するために、配偶者の税額軽減を最大に受けることができます。
併せて、2次相続の発生も考慮に入れ、遺産分割の方針を立てることが必要です。
現在の評価額と将来の評価額を予測し、配偶者は将来値上がりしそうな財産を相続しないというのが基本的な考え方です。
- 値上がりの可能性がある資産の例
(1) 現在は「調整区域」と指定されているが、近い将来「市街化区域」へ編入される可能性がある土地
(2) 近い将来、道路拡幅工事が行なわれると、道路に面する路線が増える可能性がある土地
(3) 近い将来、電車や地下鉄の新駅がにできて利便性がよくなる可能性がある土地
(4) 「調整農地」で「市街化農地」へ編入される可能性がある土地等 - 将来の値上がりを考慮する必要がない資産の例
(1) 建物、現金、預貯金
Q13. 物納したい土地がありますが、配偶者と子供が相続する財産で留意点はありますか?
A13. 土地を物納したい場合であっても、相続財産に現金があれば、税務署は「先に現金で納めてください」と言ってきます。
このような場合、配偶者が現金や預貯金を相続し、子供たちは土地を相続すると、物納の申請は通りやすくなります。
なお、土地が複数ある場合には、物納したい土地は子供たちが相続し、物納したくない土地は配偶者が相続することを検討してください。
いずれの場合も、配偶者は、配偶者の税額軽減を受けることができるため、相続税は子供たちが納めることになります。
物納をお考えのときは、このような点も考慮する必要があります。
Q14. 土地を売却して相続税の納付に充てる予定です。延納申請も行っておくべきでしょうか?
A14. 土地を売却して相続税の納付に充てる場合も、延納申請をしておくことをお勧めします。
土地を売却して相続税の納付に充てる場合も、延納申請をしておくことをお勧めします。
土地を売却する場合、希望の価格で売却できる保証がないからです。
念のため延納申請をしておき、その上で不動産業者に売却を進めていただく方が安全です。
なお、延納申請は納期限までに申請しておかないと、売却できないことを理由に後から申請することはできません。なお、申告期限後に売却代金が入った場合は、延納した残債を一括納付できます。また、希望どおりに売却できなかった場合は、延納を継続することもできます。